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無資格学芸員かく語りき  byドクターアルカイック


無資格学芸員(?)がお届けするユニークで知的な美術コラム
これであなたも学芸員or美術評論家!?
毎月1回更新していきます。お楽しみに


芸術家と評価  
第8号− 2008年8月号 −


近年、美術館が十分な予算を確保できないことなどの理由で、あまり大掛かりな展覧会ができなくなっている。 そこで目をつけたのが、比較的若い世代の作家たちの展覧会。今までどちらかといえば画廊が扱う領域だが、 元気がなくなってきた画廊に代わって、美術館が参入してきた。経費をかけずにできる展覧会というのが本音だが、 そこはそこ、美術館の見識として、アートシーンへの積極的なかかわりだとか、新しい潮流を紹介するとか、 もっともらしい理由をつけて開催することが多い。

美術館が、いくら画廊の領域を侵しても、越えることのできない一線がある。かなり前だが、ヨーロッパのある画廊主が言った言葉、 「私の画廊では、生きている作家しか扱いません。作家が死んだあとは、別の人がフォロウすればいい。」 一見無責任に聞こえるセリフだが、実は確かな使命感が背景にある。それは、「画廊は作家と常に二人三脚で、 作家の評価を世に問いつづけなければならない。」というものだ。二人三脚は、作家が生きていることが前提だ。 作家は、生存中は新作を発表し、新たな評価を獲得するが、生を全うすると、それらの作業は終了し、 おのずとその生涯に対する評価が確定する。この画廊主の見識に従うことだけは、いかなる美術館もできはしない。

作家の死が、それほどの意味を持つことを、画廊主よりもはっきり自覚しているのが、ほかでもない、 その作家自身の妻あるいは夫だ。若き日に、芸術家同士夢を抱いて結婚し、相方の成功を信じて、献身的に尽くすも、 次第にどちらかが作家、他方が経済的サポート役にと分かれてゆくケースは、昔も今も変わらない。

筆者の友人にも、惜しまれてこの世を去った画家がいる。彼が、存命中に言ったセリフで、今もはっきり覚えていることがある。 「俺が死んでも、どこかの店先で、たとえ100円でもいいから、作品が並べられたらいいねえ。」たった100円と笑うことなかれ。 彼は、芸術家の死後の評価が、それほど厳しいことを自覚していたのだ。しかも、たったそれだけの評価でも、 自らの手にしたいという、画家の魂をもっていたのだ。




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